船旅のアゲハ
いとう


蛹の時代は終わったと
鱗粉まみれの陽光を謳歌する
ここには花が少ないからと
蜜の代わりに蜂蜜を
葉の代わりに
デッキチェアを

さようなら、また今度、遊びましょう、晴れの日に。
そのうちね、しばらくは、この船も、海の上。

蛹の時代は
とうに終わった
きれいなままで
旅は続くよ
君がいても
いなくなっても
船は海の上

さよならは、出会いの種。そのうちは、拒絶の根。
この船が、岸に着く頃、君はもう、死んでいる。

雨の日のアゲハ
いつでも飛び立てるよう
湿った羽の手入れに余念なく
夢を抱えて
ため息すら娯楽に




未詩・独白 船旅のアゲハ Copyright いとう 2005-02-05 10:35:13
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