終ノユメ
ただのみきや

朝の五時半を少し回ったころでした
六畳の畳が漂流し始めたのです
思わず活けようとしていた椿を咥えましたの
そうしてうんと股を開いて立ち上がりました
初めてですこんな太ももの上まで晒しちゃって
きれいだったのね わたしの脚
そしたら文字が浮き出ていて
何やら難しい漢字とカタカナでシタリとかサレタリとか
そうこうしている間もなく
わたし頭がパッと咲いちゃったみたい
かるめんになってふらりめんこを踊って
本当に若いって素晴らしいことなんだなって
ほら水から上がった動物がぶるぶるってよくやるでしょう
あんな風にできちゃうの嫌な記憶をみんな
《――古のダムが決壊! 》 誰かの声が何度も響いてから
お腹の中へ すとん って なんだか身籠ったみたい
ええ もう艶めかしくて
わたし興奮してすごく変だったと思うんですけど
そんな自分を見ているもうひとりの自分がいて
まるで観音菩薩みたいに落ち着いていましたの
すると重力が傾くって言うのでしょうか
ご近所の噂話とか新聞の見出しとか
昔好きだった人がよく言っていた文明批判とかが
みんなお鍋を傾けたみたいに流れてしまって
わたしが過ごした時代も水没しちゃいました
誰かの眼球が小魚みたいに群れて泳いで行きました
あれきっと 未来を捜していたのでしょうね
いま思うと 難しい理由なんて誰も欲しくなくて
ただ少しでも豊かに幸せになりたかった
人ってそういうものでしょう
わたしいつの頃からか光るものが二重三重に見えちゃって
ちょっと落ち込んでいたんです
だけどほら地球がずれて重なって陰陽の双生児みたい
清水の舞台から飛び降りるつもりで
わたし地球から飛び降りましたの
仰向けに真っ逆さま お花畑に寝転ぶみたいに
嫌 もう 恥ずかしいわ
わたしったらその時 いっちゃったみたい
うふふ 可笑しいでしょう



                   《終ノユメ:2015年1月31日》







自由詩 終ノユメ Copyright ただのみきや 2015-01-31 23:28:07縦
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