魔法
馬野ミキ

学校から帰ってきた息子が
窓際で何かしている
覗いてみると、濡れたつまようじを網戸の目に刺し水の膜を張らせている
何してるの?と聞いたら
テトリスみたいと言った
ゴミも取れると。
なんてたわいのないことに夢中になって素敵だなあ

息子より先に風呂を出る
俺は10分と風呂にいない
パソコンの電源消しとくぞーYoutubeのはお気に入りにいれとくからー
うん
息子が風呂を出た時まだパソコンの電源はついていた
切れるのに時間がかかっていたのだ
なんだ ついてるじゃんと息子は言った
俺はパソコンに向かい魔法をかける真似をした
手を振りかざしエイッ!と言ったらパソコンの電源が切れた
息子は、うそーうそーと驚いていた

俺には2つ下の弟がいた
幼いころ、弟が嘘をついていると思った時に
ウルトラ透視光線で見ぬくぞと脅すと
弟はいつでも素直に白状した
その当時の弟もいまの息子もまだ魔法を信じられるのだ

息子に種明かしをしてバスタオルで髪の毛をふいてやる
テレビではアラブのある国の特集をしていた
そこに住む日本人の得意料理はというところで俺は「焼きうどん!」と叫んだ
すると本当に、その日本人の得意料理はやきうどんだった
これには嫁さんも、当てた俺もびっくり
嫁さんが怖いと言い出した
なるほどまだ魔法は生きているようだ。


自由詩 魔法 Copyright 馬野ミキ 2015-01-28 13:06:41
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