放置車両
ただのみきや

公園の駐車場に
もう長いこと車が放置されている
違反切符と張り紙だらけ
ミラーはとっくに割られている
今では雪に埋もれてかまくらだ
出はいりできない時間がそこにある

ワックスを効かせたピッカピカの新車時代
エンジンを熱く燃やして走り続けていた頃
焼けたアスファルトを
尖った砂利の道を
冷たい雨の上を
駆け抜けたタイヤは
今ではひしゃげている
フロントガラスの向こう
かつて誰かの手が
温かい血の通った手がふれた
ハンドル 心と意思が流れ込んだ
その美しい円は静止したまま
もう二度と

――メイワクナホウチシャリョウ
持ち主の居所は知れず
事情も知れない 
が たぶん
直して乗るくらいなら
買ったほうが安上がりなのだ
処分するにも相応金がかかる

モノをひとのようには扱えない だが 
ひとをモノのように扱うのは止した方がいい
馴れて麻痺してしまう前に
ひとがひとしくひとらしく生きられる
未満の世界なのだここは

モノはひとほど手がかからないが
ひとはモノほど無口ではいられない
――メイワクナチホウヤロウ
じきに わたしも



            《放置車両:2015年1月21日》







自由詩 放置車両 Copyright ただのみきや 2015-01-24 20:44:17縦
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