無邪気な竪琴
ただのみきや

こころ決して身を投げる
あなたの瞳の奥底へ
海の深みに沈んで落ちて
胸苦しさに酔いしれて


あなたの底に潜むものが
闇に蠢く魔物なら
どうかその触手で存分に
わたしを探って下さいな
全盲者がするように
わたしのすべてを感触だけで


もしも深海に住むものが
遠い星から来た天使なら
光の真珠でわたしを飾り
ネオン仕立てのダンサーに
透けたからだをユラユラさせて
きっと退屈させないわ


だけどあなたの海原が
どこまでも何もない青い孤独なら
わたしはいつまでも彷徨うでしょう
時々遠く聞こえる潮騒や荒狂う叫びに
寄り添い 静かに歌いながら
満ち足りた幽霊みたいに


夕日のように燃え落ちて
あなたの記憶の海原へ
静かに沈没するのです
空気なんてもう遠い世界



     《無邪気な竪琴:2014年12月19日》






自由詩 無邪気な竪琴 Copyright ただのみきや 2014-12-23 23:18:13
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