ダヒテと世界
嘉村奈緒

ダヒテ。



ダヒテの発音は砂のようで
ダヒテの腕はいつもきみどりいろな気がする。
 僕の魂は重みにつぶされたりはしない
 青梅線を走る送電線に巻き込まれたりしない
 そうなったら
 ダヒテ
 の、きみどりいろを思い出す よ

  ダ ヒ テ
  僕は毎夜見る夢で四つんばいになっている
  自分が走ってきた景色はもうないんだ

   ( 魂 は 浮 か ぶ の ? 
     土 に な る の  ? )


  僕が死んでも、色とりどりの食べものが、並ぶだけなのだから
  
  送電線に巻き込まれたら、助けにきてよ、ダヒテ。


本当の海を知らない
本当の森を知らない
僕の話している言葉は何を育てているの?
 (・・・そんな、きみどりいろで、じゃりじゃりした、はつおん、で
図書館に行って、片っ端から文字を見たよ
でも帰ろうと手袋をはめたらほとんど消えていた
真っ白な空気が息を止めようとするんだ
ひたすら白い
のだよ
白い、白い
濃縮された、無知だ




    世界って 何回言ったかな
    僕は世界に馴染んでいるだろうか
    あのね、ダヒテ、こんな言葉を聞いたんだ
    「ひとはひとりだ」
    繋がりが
    見えたらいいのにって思う
    困ったり
    困らなかったりするだろうけど
    それが
    蝶々結びだったら
    少し、楽しいよ
    きっと
    少し。





ダヒテ。

観覧車が見えるよ
あれに乗ったのは何歳だったかな
物が小さくなっていくのは
とても怖い
自分がこのまま
しゅるりと消えていくんじゃないかって
思うよ


静かだね
静かな世界




静かなダヒテ。




     君をうそだって言うのは

     なんて

     とてもたやすい




自由詩 ダヒテと世界 Copyright 嘉村奈緒 2005-02-03 00:13:45
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