鳥よ—
夏美かをる

夜と朝が交差する一瞬
藍色の空めがけて解かれる
淡い黄金(こがね)の帯
その真中を引き裂いて
真っ直ぐに飛んで行く 
お前は名も無き一羽の鳥

霊妙なる森の奥深く
未だまどろみから醒めぬ湖の
常盤の色肌を滑るお前の分身が
必死に縋ろうとしているのに
一度も振り返ることなく
お前は
完璧な直線を描いて
軽やかに飛んで行く

お前はなぜそんなに逝き急ぐのか?
お前は知っているのか?
お前のDNAが
己をどこへ導こうとしているのか
逝き着く果てに
何がお前を待っているのか?

やがて薄藍に溶け込もうとしている
黎明の三日月 その横顔が
静かに手招いているというのに
お前は
たゆたう暁の靄に
鋭利な裂け目だけを遺して
余りにも速く
飛び去って逝こうとしている
輝く白銀の翼を
ただ狂おしく羽ばたかせながら


自由詩 鳥よ— Copyright 夏美かをる 2014-12-05 16:04:41縦
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