昭和残響伝
salco

健さん
坊やには雪駄が要るのでしたよ
とうに廃れた503
そんなものをいまだ穿き
巨乳のアルビノを抱きたがるくせ
面やつれのお杏さんを探している

かほどに行き暮れているのは
待ちあぐねるのでなく
赴く為に生まれ来たのでありますから
懐のドス棄てられずじりじりと
こわれ眼鏡の弦をかけて眺めている
鉄骨とコンクリートで整理整頓された故国くに

荒漠に血の暖を欲しがる
そんな坊やが生き抜く地平は
焼土に恐らく大東亜の戦
七十年も遅刻したうえ益体もない健康体にて
一升瓶抱く傷痍乞食のていたらく

黄金バットに焦がれた身なれば
今日も事なしと山の向うに落日見遣るのは
胸抉る紙芝居の終章じゃありませんか
それなら男の血潮はいずこへ撒けば好いでしょう
しとど夜垂ヨダレのカップホールで眠るとでも?

健さん
ハズれながらに道も踏み外せぬ男ではあります
ナルヲのくせにしみったれ
大口叩きの根性セコく
宝くじなぞ買う俚俗でもなし
困ったものです

坊やには
己が血を吸う雪駄が要るのでしたよ
散りぬるをわか花の下
瞠目のまま無残な敗者で別れたいのです
教えてやっては下さいませぬか
義とは忍辱、踏みとどまって男だと

そのかみ
義を身ごもった男がおり


自由詩 昭和残響伝 Copyright salco 2014-11-26 23:33:31
notebook Home 戻る  過去 未来