ボクの名画座-映画あ〜じゃこ〜じゃ-第三館
平瀬たかのり

第二館での紹介作
『歓待』『接吻』『海炭市叙景』『おっぱいバレー』『さんかく』
『川の底からこんにちは』『キューティーハニー』『木曜組曲』
『リンダリンダリンダ』『かぞくのくに』

 映画を観るボクの中には女の子が一人住んでいましてね……というわけで(どういうわけだ)、第三館目は「女の子バンザイ」映画。まぁその最高峰は第一館で紹介した『櫻の園』なんですけどね。


?『Wの悲劇』(1984)
〈監督=澤井信一郎、脚本=荒井晴彦、澤井信一郎>

 薬師丸ひろ子が女優としておそらく一段あがったであろうと同時に、角川映画にとっても一つのエポックとなった作品なんじゃないだろうか。ミステリーの部分は劇中劇で描き、そこにあまり重きを置いていない構成もいい。
 何より劇中劇以外の部分を書いた(全編の7割)という荒井晴彦さんのシナリオ、セリフがスゴクいいんです。今をときめくクドカンさん? いやぁゴメン、映画作品何本か観ましたが、荒井さんの足元にも及んでいませんわ。映画じゃ小ネタは通用しませんからねぇ―という私見(笑)
 ただ「死体、どうやって別のホテルまで運んだんだよ」ってツッコミどころは残る。あそこちゃんとクリアしてほしかったなあ。
 とまれ本作は、老若関係なく女性の心に切ない甘さを響かせる作品になっていると思います。
 角川春樹が仕掛けたメディアミックスという手法の一つの到達点ともいえる作品ではないでしょうか。
  「顔、ぶたないでよ! 私、女優なんだから……」


?『ひみつの花園』(1997)
〈監督=矢口史靖、脚本=鈴木卓爾、矢口史靖>

 銭ゲバOL、五億円とともに銀行強盗に拉致さる! んがしかし、逃走途中で強盗の車は大破!強盗死す! 銭ゲバOLは生き残る! んがしかし、五億が入ったアタッシュケースは樹海の「ぽっかり池」へドッポーン! さあどうする銭ゲバOL? 決まってるじゃん、免許を取るのよ、ロッククライミングもスキューバもモノにするのよ、大学入って地質学も研究するのよ、でもって「ぽっかり池」へ突撃だぁ〜〜!
 ぶっきらぼうで投げやりなんだけど、こと「お金」に関しては異常な執着心を見せる主人公、咲子のキャラを演じるのは西田尚美。彼女を演じられるのは彼女しかいなかった、絶対。薄幸な役が多かったりするんだけど、平成私情最強のコメディエンヌは彼女なんですね。(ちなみに昭和私情のそれは伊藤蘭)
 あなたの大事なお友達がしょんぼりしてたりなんかしたら、ゼヒ、この作品鑑賞をを勧めてあげてくださいませ。


?『二代目はクリスチャン』(1985)
〈監督=井筒和幸、脚本=つかこうへい>

 ケレン見たっぷり。たっぷりすぎてちょっと閉口する部分あったりもするんだけどそこもまた本作の魅力(笑)カドカワ映画の成功例。
 志穂美悦子がねぇ、もう本当にキレイ。耐えて堪えて我慢して、そして最後のド啖呵!出入りの場面はもう大興奮。 あなたのために悦っちゃんは啖呵切ってます。
 柄本明、室田日出男、北大路欣也、蟹江敬三(ここでも全開カニエ感!)これだけのメンツで脇を固めりゃそりゃ面白い作品になりますわ。
 こういう良質な「大人の漫画映画」が作られなくなったっていうのは淋しいことだと思うんですよねぇ。


?『ココニイルコト』(2001)
〈監督=長澤雅彦 脚本=長澤雅彦、三澤慶子>

 恋に仕事に傷つき、一度は膝を屈した女性が、新天地で再び立ち上がるという古くからの王道ストーリー。ちょっといかにもすぎるなぁ、という感もあるのですが、そこを本作が映画デビューとなる堺雅人がひょうひょうとした演技によって気にならなくしていきます。彼の「ま、ええんちゃいますか」という台詞に救われていくのは、作品であり主人公であり、かつ鑑賞者でもあるのでしょう。
 主役は真中瞳(現・東風万智子)。気持ちが真っすぐ伝わってくるいい演技をされる女優さんだなあと思いました。せっかく改名されたのですから、もっともっと活躍してほしいところです。


?『鬼龍院花子の生涯』(1982)
〈監督=五社英雄、脚本=高田宏治〉
 
 これ、最近鑑賞の機会に恵まれたのですが、高校生の時にテレビでやってたので観たのが初見なんです。もちろん夏目雅子様が目当てで。ちなみに雅子様は主演ですが「鬼龍院花子」役ではありません。
「女子力」? そんな言葉本作の雅子様の凛々しさを観てから言ってくれ。
 ダイナミックなストーリー展開の中に、日本的エロチズム(エロティシズムとは書きたくない)がふんだんに散りばめられた五社監督真骨頂の作品だと思います。
「あては、高知九反田の侠客、鬼龍院政五郎の…鬼政の娘じゃき…
 嘗めたら……嘗めたらいかんぜよっ!!」


?『恋人たちの時刻』(1987)
 <監督=澤井信一郎、脚本=荒井晴彦>

 脚本家の荒井晴彦さん。この方は本当に素晴らしいシナリオを書かれる方なのです。監督、役者に台詞の改変は一切許さないのだという。それほど自分の仕事に自信と誇りを持っておられるのだろう。
 そして監督の澤井信一郎さん。若者が抱く普遍的な悲しみを見事に捉え、スクリーンに活写することができる監督だと思います。
『Wの悲劇』でも組んだ「澤井―荒井コンビ」の本作。切なく大きな余韻を残す作品に仕上がっています。
 野村宏伸、河合美智子とも正直演技は上手いとはいえませんが、その素人っぽさが登場人物のキャラとリンクして観る者を引き込む。永島敏行、石田えりの『遠雷』パターンですね。とりわけ河合美智子の大胆な演技は特筆もの。彼女の見事な脱ぎっぷりをもってここにこそ紹介したい。
 青春映画は若さゆえの痛みをきちんと描かなくてはならないというのが、わたしの持論。そしてこの作品の持つ痛みこそが青春の痛み。
 角川映画のみならず、邦画史上に残る青春映画といってもいいと思います。


?『おもちゃ』(1999)
 <監督=深作欣二、脚本=新藤兼人>

 原作、脚本=新藤兼人、撮影=木村大作、監督=深作欣二、これで面白いものに仕上げってなきゃ嘘だよな、と思って観はじめたら、やっぱり面白かった。
 女優陣は生き生きと体張って演技してるし、かつての京都の色街の裏側もしっかり描けているし、作品世界にどっぷり浸って観ることができました。
 主人公、時子の憧れの男性役で月亭八光が出てるのですが、これが意外や意外よかった。水揚げされる前に時子が彼に会いに行く場面があるんですが、そこがすごくいいんですよ。
 ラスト、少し乱暴に終わり過ぎてる感があるのが難。それでも花街の人間ドラマとして十分楽しめます。
 主演の宮本真希、元はタカラジェンヌだったのね。もっと活躍してほしいなあ。ラスト、見事な彼女の肢体には「むちむちぷりん」という言葉が脳内に浮かんでしまいました(笑)


?『自虐の詩』(2007)
 <監督=堤幸彦、脚本=関えり香・里中静流>

 漫画史上に残る業田良家の大傑作大河4コマ漫画の映画化。
 もちろん映像化に賛否はあると思うし、その出来にも納得できない人も多いかもしれない。 ただ、ボクとしてはこの作品は認めたいのです。主演、中谷美紀の主人公「幸江」をどうしてもやりたいという気持ちが、映画化への第一歩だったという話しを記憶しています。きっと「幸江」は彼女にとって「誰にもやらせたくない役」だったのです。その気持ちがビンビン伝わってくるのです。幸江が彼女でよかった。
 正直原作には負けてます。でも負けるの覚悟で挑んでます。その気概を買いたい作品です。まあ、この手の人情ドラマには評価が若干甘くなってしまうのかもなぁ。


?『ハラがコレなんで』(2011)
 <監督、脚本=石井裕也>

 石井裕也監督はまだ若いのに本当にたいしたもんだなぁと思う。そら満島ひかりも嫁になるわ。
 経歴的にはエリートみたいなんだけど、目線は凄く低い。自分の作品で観てる人をどうやったら元気にさせることができるだろうってすごく考えてる人だと思う。ちょっと松竹新喜劇のテイスト持ってるぞ、この監督。
〈妊婦ヒーロー〉仲里依紗もキャラに合ってて、ここに紹介する由縁なのですが、何より爆笑するのが石橋凌と中村蒼の伯父-甥が中華屋の厨房でたたずんでるシーン。都合三回くらい、二人が並んでボーっと立ってるだけの場面があるのだけど、あそこホントに爆笑しました。笑かしよるわぁ〜あそこ。その場面みるだけでも価値ある一本です。


?『キューポラのある街』(1962)
 <監督=浦山桐郎、脚本=今村昌平、浦山桐郎>
 
 本稿トリはこの名作にて。
 戦争は終わったぞ繁栄に向かっていざ進め、みたいな作品ではけしてありません。貧困や離別ゆえのやりきれなさ、痛み――それらを抱えて、それでも人々は日々をどうにかこうにか歩まなければならなかった、そんな時代だったからこそ、吉永小百合の清楚で健気な美しさは「戦後の希望」であったのだと痛感させられました。


結論=いつの時代も女の子が元気な映画は面白い!!


散文(批評随筆小説等) ボクの名画座-映画あ〜じゃこ〜じゃ-第三館 Copyright 平瀬たかのり 2014-11-23 23:00:23
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
ボクの名画座〈映画あ〜じゃこ〜じゃ〉