能面
イナエ

壁に掛かった能面たちは
電灯に照らし出されると
生き返る

幼い子には
能面たちの話す声が聞こえるのか
じっと見つめ後ずさりする

激しい風雨の夜は
般若面が半開きの口の奥で
歯を食いしばり
部屋を守っていた

あくる朝
般若の横の
小面の白い頬に一筋の赤い涙
一体何があったのか
こらえてこらえて
つい零してしまったような一粒


自由詩 能面 Copyright イナエ 2014-11-19 11:46:37縦
notebook Home 戻る