itukamitaniji



僕は貝になって 深い深い海の底へ沈んでいった
クラゲの群れをよけて 大きなクジラに驚いて
どれくらい時間が経っただろう 一瞬にも永遠にも感じる
ごつんと音がして どうやら一番底まで辿り着いたみたいだ

殻の中にしまいこんだ秘密 誰かに分かってもらうことすら
面倒くさくなって 耳を塞いで口をつぐんでいた
絆、仲間、夢、希望 その他その類いの似たようなもの
所詮僕たちは それらを信じてしか生きていけないという

嫌気がさして ならばと離れてみるなんて安直な答えしか
見つけられないのが 余計に腹立たしくて仕方ないけど

探さないでください しばらく僕はどこにもいません


僕は貝になって 深い深い海の底で眠った振りをしている
誰かの優しい言葉さえも 煩わしく思ってしまっている
その場しのぎのうすっぺらなら そんなものは必要ないよ
そうやって強がっても それらを信じて生きていくしかないのに

勝手に傷ついて落ち込んだ挙げ句 開き直るなんて幼稚な答えしか
見つけられないのが 余計に子供じみてみっともないけど

探さないでください しばらく僕はどこにもいません


また仲良しの振りか 都合のいいときだけのうすっぺらな関係だな
また悲しんでいる振りか 自分だけだと思っているのか
また聞こえない振りか 本当は誰かの声が気になって仕方がない
また関係のない振りか どこに逃げ場所があるというのか


巧妙に隠れているつもりでも どうせまたすぐに見つかってしまう
何処からか光が射し込んで 僕はまた連れ戻される
悲しみ、苦しみ、絶望、秘密 その他その類いの似たようなもの
何でもかんでも分かち合う世界に 逃げ場所なんてなくて

殻はこじ開けられて 白日のもとにさらされてしまう
どうあがいたって 僕は世界の一部だったんだ

探してください 今の僕はどこにいるんだろう


自由詩Copyright itukamitaniji 2014-10-22 21:34:12
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