沈黙の百合
朝焼彩茜色


百合の蕾 ペリカンの嘴にしか見えなかった
百合の姿は馨りだけで 十分 部屋の壁を越えて漂ってくる
魔性の女にも見える 謝罪は本質を見抜いた時にする

今は葬儀で頂いた貴女を花瓶に挿すくらいしか能がない
素直に貴女が美しいだなんて思わない 遠目で十分な凛々しさ
肌寄せて見ると 手入れのされていない模様が怪しかった

貴女に恋だなんて絶対できない

遺書に祭壇に百合はいらない

蘭の類はもっとごめんなさい

キク科とバラ科のみ挿すしか私には能がない

百合 本質は如何に 声を聴かせて
ある人間の女に忌み嫌われて

文句ぐらい聴きたかった

それでも

ペリカンの蕾をひらけば人間の舌にしか見えなかった


自由詩 沈黙の百合 Copyright 朝焼彩茜色 2014-10-16 12:00:39
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