カルマン(ごう)
Giton

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閉め切られた扉が白く光る
神は要らないと古い書物はおしえる
きみたちの歩行 悪寒 口笛
そしてひとつの鼓動と
またひとつ滲み出す苦い汗と
きみたちサットヴァのカルマンが
もうひとつの世界を生みだすのだと
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アビダルマ・コーシャと
聖文字で記された書物をぼくは投げ捨て
白い扉を押せばそのままひらかれて
そこにひかりは射し込むことを禁じられ
空気はうごいているのか止まっているのか
わからないほどほのかなエンジェルの吐息
胸にそよぐカルパの初めの風
きみの胸に
そしてぼくの胸に
扉は拒むように白くひかり
カルマンの渦にぼくは初めてのもののように身をひたし
はるかな記憶は洩れ来ることもなく
きみのカルマンにぼくは身をひたし
永い永い歳月きみがそだてつづけたこの渦にうすぎぬの匂いを求め
瘴気のうちにこうべを垂れ
ぼくはただ融けゆくことのみを願う
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押せばひらかれる扉のように
けっして拒むことのなかったきみに
押せばいつでもひらかれて
願わなければ離れてゆくだけの
きみのカルマンはうずたかく積み
ぼくは遠ざかっていた歳月をおもい
扉は白く光りつづけ
訪れる者なければ雲は何層にも積み
カルパの先のカルパのその果てで
きみはいつか訪れるものを待ちつづけている
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(注)1カルパ=43億2000万年
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自由詩 カルマン(ごう) Copyright Giton 2014-10-10 03:19:52
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