「ハンプティダンプティ」
桐ヶ谷忍

私はわたしの重みだけで倒れて割れる

痛みの断片を寄せ集めて
出来上がったわたしを私は消したいのに
身体の内側から鋭い切っ先に刺されて
抜けた髪の毛の断面からすら血がしたたる
私の中身はわたしに占拠されている

私が私に成る為にはわたしが必要だった
痛みの伴わない成長なんてないでしょう
でももう十分私は傷ついて
私は私に満足している、のに
わたしは未だに身悶えている
痛みにこそ存在意義のあるわたしは
むしろ嬉しげに痛苦を噛みしめている

これは誰の顔 それは私
これは誰の身 それは私
これは誰の肉 それはわたし
これは誰の骨 それはわたし

血走ったこの目はどちらの目

薄皮一枚の私に成るために
わたしを覆い隠したわけではない
私はうまくやっている
妻として女として人として

だけど私は
わたしの重みに耐えかねて
いつかきっと倒れて割れる

うまくやっているつもりでも
生きることは痛むことだから
わたしは私の中で膨張し続ける


自由詩 「ハンプティダンプティ」 Copyright 桐ヶ谷忍 2014-10-07 18:43:13
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