キャベツ学舎
salco

手渡され
キャベツを剥いている
一つが終わるとまた一つ
終日キャベツを剥いている
来る日も来る日も剥いている

甘ったるい青臭さ
葉をもぐ音は眠気を誘う
額に縦皺や青筋を浮かべ
倦みながら慣れ切った人
またも芯の際でしくじり
破けた葉に涙ぐむ人
ため息と独り言を交互に
苛立ちを吐き散らす人
手の痛みに耐えかね
脚の浮腫みを訴え
目眩を覚え
そうこうする内
椅子を蹴倒し作業を放棄する人
我慢の末に気がおかしくなる人
ついと席を立って戻って来ぬ人

罰則はない
規定があるだけ
褒美はない
キャベツがあるだけ

何の為に
何の為でもなく
誰の所為でも
誰の為になるわけでもない
そんな事はわかっている
キャベツを剥くだけ
足元に葉が重なって行く
重なって山になり堆くなる
下から溶けて腐り始める
粘膜を突く臭気が喉を逆流する
嘔吐する人
わめき出す人
くずおれる人
慣れ切った人

手渡され
終日キャベツを剥いている
一つが終わるとまた一つ
来る日も来る日も剥いている


自由詩 キャベツ学舎 Copyright salco 2014-10-01 23:49:41
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