百鬼繚乱 < 2 >
nonya


HONEONNA (骨女)


わたしの肩甲骨を
あなたの冷たい指先が
抱き寄せると

わたしの胸骨は
哀しく軋んで
あなたの裏切りを覚った

わたしの鎖骨を
あなたの嘘がゆっくりと
伝い落ちて

あなたの名を呼びながら
わたしの末節骨は
宙をつかむ

けれど

ベッドの下にそっと落とした
わたしの涙骨
気づくのはいったい
誰なのかしら





NURIKABE (塗壁)


君は壁を作る 今日も明日も壁を作る
そして壁は迷路を作る その中を君は
さまよい続ける 君は壁を作る 透明
の壁を作る 透明の壁が連なった透明
の迷路からは 人は見えるけど温もり
は受け取れない 街は見えるけど行先
は皆目分からない 君はいつも疲れて
いるのに 壁を作るのを止められない
    僕は壁になる 用もないのに
壁になる 時々君は僕にもたれかかっ
て 流れる雲をぼんやりと眺める 僕
はただ見守ることしか出来ない ひと
休みしたら 君はまた壁を作りに行く
のだろう 迷路をもっと複雑にしてし
まうのだろう       でも君は
何処に出口があるのか知っている 出
られないのは自分の弱さであることも
 もしも夕焼けに涙ぐむようになった
ら 僕はいつでも君の重さを支えてあ
げる 袋小路のどんづまりの壁として





NOPPERABOU (のっぺらぼう)


モノとコトが溢れすぎていて
嫌になる
何処を歩いても躓いたり振り回されたり

限られた時間しか与えられていないのに
どうして
こうも難しく生きようとするんだろう

人って

もしも明日目覚めた時にモノとコトが
キレイさっぱり
初期化したみたいに消えていたら

みんな怖じ気づいて固まってしまうんだろう
せっかく
本当の自由を手にいれるチャンスなのにね

わたしならまっさらな今日の片隅に
雲に似せた眉を描いて
空の色の瞳を描いて
丘の高さの鼻を描いて
心地好くせせらぐ口を描いて
小鳥を描いたら耳のようにぶら下げて
新しいわたしを始めるだろう

どうせモノとコトを並べ替えるだけの
コピペしたような毎日が続くんだから
たまには
そんなことが起こってもいいと思うんだけど





NURARIHYON (ぬらりひょん)


つかみどころなんて
あったってしょうがない

そんなにやすやすと
つかまってやるものか

若い頃の苦労は
買わずに質に入れたし

長い物には
巻かれるふりして帯にした

どんなに虫が好かなくても
真っ正面から当たるなんて
青臭いドジは踏まない

風を知り尽くした柳のように
へらへらと言葉をかわしながら
いつまでもつき合ってやるぜ

今宵も
ぬらりんと
夜の街に這い出したら

宴の
ひょんな末席から
おやじギャグでも散布してみるか




自由詩 百鬼繚乱 < 2 > Copyright nonya 2014-09-03 22:45:39
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