私を認めて
ただのみきや

私は自分の信じたいものを信じ
見たいものを見つけ出し
聞きたい言葉を探し出し
不都合な事実は無視し耳を塞ぐ
反論に備えて(怯えて)理論武装する
あたかも敵国を想定して軍事演習をするように
そもそも真実よりも
あるいは事実の多面性を学び立場異なる人々と
理解し合い共存し合うことよりも
私が信じていることの優位性を
否むしろ私の優位性を証明したいだけなのだ
だから仮に真逆のことを信じていても
私のやることは同じだろう
現実では手に入らないものを
ネットの世界で手にしたくて
奇妙な矛盾だが
本名を隠し
キャラクター作りに余念はない
実の姿は誰にも見られない知られない
穴倉の中に隠れるように
他人の気持ちなどお構い無しに
ネットで得た知識の寄せ集めを自論の如く書き込む
反論されたら徹底的書き込みは自分からは止めない
止めたら負けだ
サイトの規約に引っかからないスレスレの所まで
相手が反論しなくなるのは
きっと私に論破されるのが怖いからだ
そう思うと
なんだかとっても良い気分
だから今日もとあるサイトを見て
つけ入る隙のある投稿を捜している
そもそも揚げ足を取ること以外
何も言えることはないのだが
私の専門知(本当は受け売りの集合知だけど)で
書き込めるものを見つけては
力を誇示して見せてやる
…えっ?
虚しくないかって?
全然虚しくないにきまっているじゃないか!
寂しくなんかない!
吾輩の辞書に「虚しい」という言葉はない!
あと「相手の気持ちを尊重する」という言葉もない!
それから「思想の違いを受け入れる」という言葉もない!
怯えた小型犬のようにいちいち咆えずにはいられない!
情緒的成熟に伴う心の余裕など一切ない!
だから
だから
認めてほしい
私が此処にいることを
お願いだから
誰か
誰か



         《私を認めて:2014年8月23日》







自由詩 私を認めて Copyright ただのみきや 2014-08-23 19:55:06縦
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