モドキ
nonya


なかなか膨らんでくれない風船に
飽きもせず息を吹き込み続ける
何処かに穴が開いているのを知りながら
滑稽な独り遊びを止めることが出来ない

春には妄想を咲かせて散らして
夏には傷痕を弄んで痛がって
秋には郷愁を嘲笑って抱き締めて
冬には孤独を気取って飼い慣らせず

なかなか膨らんでくれない風船は
未だに空の素っ気なさを知らず
明け透けな虹の嘘っぱちを見抜けず
浮力のない言葉の欠片を漏らすばかり

それでも
雲のように眺められたくて
光のように弾んでみたくて
膨らまない風船に息を吹き込み続ける

あくまでも
耳ではなく目から忍び込むため
声ではなく文字を響かせるため
萎んだ風船モドキに想いを吹き込み続ける

開いた穴なんて探さずに
いつまでもモドキのまま
おそらく息と想いが続く限り




自由詩 モドキ Copyright nonya 2014-08-17 15:32:53
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