告白
吉岡孝次

1.
ほんとうは傷めていない膝をもてあましながら
ジーンズだけは新しく履きかえたクリスマス
この街の密度を写した覇気のない家電量販店で
僕は一人の少女を盗み見てしまう

   ***

「スノーホワイト」は僭称ではないのか
だが少女はそんな些事には拘泥しない

   ***

ディスプレイに何か打ち込もうとしているようだ
短めの髪
ダッフルコートは 暖かな白

   ***

僕はさっきまでどうしていたんだろう
眠っていたわけでもなければ
死んでいたわけでもないのに
声も知らない十幾つの 娘 の専心に
唐突に 人生の答えを直視してしまった


2.
首府のすきまを供儀で詰め しつけてあった?
僕が泳ごうと泳がされていた四季は


3.
はじめて迎える州都での 冬
寄る辺なく
まっすぐには帰るまいとする巣嫌いが
十二月の望郷の下
傍らで観ていられない、ゆきちがう防寒の彩り
躰が許す限り
、黙々と地を這う靴音を踏む
肩先を流しながら
だがそれは瞬間ではなく目撃
ただ一人 ささやかな放浪で出くわす
また一人 ある叫びをもたらす少女に


4.
身に覚えのない怒りをノートに書き付け
俺に妻をあてがおうとする欲望に銃口を突き付ける
だが
こいつが死ねば俺も死ぬのだ
小回りを効かせられない一棟へと組み込まれ
ポップコーンみたいに 弾けようとしても
いつも天井にぶつかってしまう
足を引き摺って歩く仔羊の奇妙に多いこの市街地で
冷めたことしか言えない口が今 開く

  誰もが動いている
  連絡を待ちながら
  電源を ついには切ることができないままで


未詩・独白 告白 Copyright 吉岡孝次 2005-01-24 21:53:27
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