お盆前 風に吹かれてボク
七尾きよし



宙に浮かぶゼラチンでできた風船の中で
身体を大の字にして踏ん張っているボクがいる
人から見れば自由に空を飛んでいる
でも風だけが知っている行き先
降りてみたい土地が視界に入っても
思い通りに停まったためしがない
ボクにできるのは踏ん張りつづけることだけ
ときどき気の毒そうに見上げる人たちがいる
子どもたちは風船だ風船だ、いや気球だよと奇声をあげ
見ちゃいけませんと子どもの眼をふさぐおばさんたち
空には他にもゼラチンの風船が浮かんでいて
すれ違うことも時にはあって
でも手を離すととたんに墜落しちゃうことをみんな知っていて
誰も手を振ることなくただ見つめあうだけ
また会ったねカラスに遭遇しないことを祈ってるよと
心の中で念じあいながら
遠のいていく風船をイトオシソウニ見送るだけ
風が吹く日も雨が降る日も
ぼくらはゼラチンでできた風船の中
両手両足ふんばりながら飛んでいる
いつまで飛んでいるのかはわからないまま
どこへ向かってるんかもわからずに


自由詩 お盆前 風に吹かれてボク Copyright 七尾きよし 2014-07-14 15:26:37
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