しんしんと夜
梅昆布茶

しんしんと夜の降り積もる
時計の針をすすめているものは
いったいなんなのだろうか

森深く一角獣のみる夢が
遠く聴こえる気がする
こんな夜にふさわしい響き

一角獣が問う
あなたの角はどこに

いや僕たちはそれを持たない種族
夢を感知するアンテナの無いワンセグチューナー

明日の預言にこころを奪われて
今日の自分さえも知らないんだもの

浮気な未来は
乾いた手のひらから
さらさらとこぼれおちてゆく

絶望という
大切な荷物も担えない僕らは
いつか失速してしまうのだろうか

昨日を失っても
今という場所は
必ずいつもあるものだ

明日が永遠に不可視な
曇りガラスの向こうならば
今を研ぎすませばいいさ
それだけのこと

あいかわらず俺たちは
渇いた道を迷うヒッチハイカー
とまる車なんて皆無だぜ

一角獣の夢のなかで
あいも変わらぬ戸惑いを隠せもせず

今というものを
きちんと踏みしめず
ふわふわいってしまおうか

この世界の一部であるという
認識もなくまた一角獣の

夢のほとりを彷徨う
この夜のように











自由詩 しんしんと夜 Copyright 梅昆布茶 2014-06-30 15:19:23
notebook Home 戻る  過去 未来