蚊柱
そらの珊瑚

土砂降りの雨のなかを
蚊柱が
狂ったように うごめいていた

誰かが
地上の火を
消そうと
とてつもなく
大きなバケツをかたっぱしなから
ひっくり返している

抗えないものをかぶり
ずぶ濡れになってなお
このうえなく不自由な季節でしか
育ちえない
身悶えするような
情熱の化身が
一度は
わたしの傘になかに入り
通り過ぎていこうとしている

雨脚はいよいよはやく
素足のままの女には
ゆくえは追えないだろう
六月の夜を
蚊柱がゆく


自由詩 蚊柱 Copyright そらの珊瑚 2014-06-10 08:39:31縦
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