投票所までの長く長く長い道
北村 守通

散歩がてら
投票所まで向かう
混雑することは
目に見えているから
歩いて向かう
自転車にすら乗らない
あんまり
早く着きすぎると
誰に投票するか
決めきれなくて
それは
どんなに時間があっても
決めきれないのだが
嫌なのである
それでも
投票所に着けば
解答用紙を
埋めなくてはならない
まぁ
白紙答案もありだが
とにも
かくにも
ぐずぐずすると
後ろがつかえて
迷惑になる
職員たちの
哀願するような視線も痛い
でも
私は知らないから
私は書けないのであって
本当は
書けないということを
書きたいのだ
いつも

こんなもんだから
ワタシは思う
投票用紙の
候補者氏名欄には

  『該当者なし』

という
白紙さんの正式名称が
あってしかるべきだ
そして
『該当者なし』さんが
充分な票を獲得したら
この
『該当者なし』さんこそが
当選するべきなのだ
しかし
悲しいかな
『該当者なし』さんには
実務能力がない
だから自然と
当選を辞退する形となり
議会の
理想的な運営のためには
その分の議員を
補充しなくてはいけない
すなはち
落選した者たちの中から
繰り上げ当選が行われるが
この者
最初から当選した者と
差別化を図るため

  『準議員』

といった別の者にする
『準議員』
には
議員としての権限のうち
いくつかに制限がつく
例えば
議員報酬の額が通常の議員の三分の二
などといった様に
議員さんに
どんな権限があるか知らないが
まぁ
そこから先は
話し合って
調整してくれればよろし
などと
無責任に思ってしまう
たかだか三十パーセント近くの中の
六十パーセントを獲得したところで
それは
全体の中の十八パーセント程度に過ぎず
残りの八十二パーセントは
程度の差こそあれ
支持していないという現状
そうした民意を
本当に反映するためには
などと
考えてしまうのである

やっとこさ
候補者名を
写し終えてみれば
随分と
硬筆も
汚くなったもんだ
と自己嫌悪に浸る間もなく
流れ作業で運ばれて
おセンチに浸る間もなく
顔も
性格も
もっと知らない
知りようのない
政党とやらを
記入させられる

政党政治は
停滞した
代理戦争は
時代遅れの玩具となって
さりとて
それほど
年代も経っていないから
鑑定士からの
評判もよろしくない
値段をつけずに
大事に使ってあげなさい

これ以上ない
営業スマイルで
突き返されるだけである
選挙二百年かそこら

どうだかは知らないが
まぁ
そのくらいの
歴史しかない中で
現在の
政党政治とやらが
最終進化系のわけがない
わけであって
今こそ
候補者たちは
政党から
解放されるべきなのである
すなはち
政党は
候補者擁立機関
であることを止め
制作作成機関
としてのみ存在すればいいのである
各政党は
自分たちの党風にのっとって
政策や法案を作成し
議会の場に提出し
それぞれ
持ち寄られた
格闘の
各政策や法案について
どれを採択するか
立法機関で
審議すれば良いのである
採択された案については
報酬を別途支払う
そうすれば
弱小な党の政策にも
もしかしたら
光が当たるかもしれない
弱小な党にも
機会は平等に与えられる
該当なし
の選択もありだ
そして
その分
比例代表なんかやめて
その代わりに
各都道府県などの
地方区の
地方議会の中から
中央機関の
立法機関に
出向させる
代表者を
議会内で選出し
送り出していけばいいのだ

などと
見えない群衆に向かって
熱く語ってみる
ことで
冷たい牛乳を
美味しく頂いてみる

まだまだ
投票所に
明かりがともっている
まだまだ
投票所に
自転車が
乱雑に
入場者たちを
阻んでいる


自由詩 投票所までの長く長く長い道 Copyright 北村 守通 2014-05-13 13:32:53縦
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