不動の穴
春日線香

庭でだいこんが生えそろっている
白くみずみずしいだいこんが土に刺さっている
知っているか だいこんの葉っぱには青虫が
ものすごくよくつく ほんとうにきりがないほど
だから割り箸でそいつの青首をひょいとつまんで
植木鉢の皿などにくねくねくねとのせてやり
これをうやうやしく捧げ持ち 不動の穴へ
そこからは生臭い息がもれており
うららかな春に惨劇の予感を漂わせている
おお 虫よ覚悟するがいい
皿の中身をぶちまけるように穴に放つと
そこから先は夜 夜の悲鳴でしかないのだ
わたしたち付近のものはもうそれで安心して
急いで家に帰って布団をかぶる
頭まで隠した暗闇で くくくと奥歯で笑う
悪い首は切り払わねばならない
悪い野菜の悪霊どもは

不動の穴に何がいるかはわからない
噂では死んだ娘がひとり住んでいるのだという
それを確かめようとは 誰も
オシャカサマデモオモワナイ


自由詩 不動の穴 Copyright 春日線香 2014-05-04 18:30:43
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