八本のダフォディル
夏美かをる

 ―あのね〜、お母さん!
  今日ね、お弁当の時間にね、
  ちーちゃんが一人で笑い出したの。
  だから「どうして笑っているの?」って訊いたら
  「分からない」って。
  それでもちーちゃんが、ずっと笑ってたから
  私も可笑しくなって笑ったの。
  そしたら、他のみんなも笑い出して
  みんなでずっと笑ってたの。
  そしたら先生が入ってきて
  「どうして笑っているの?」って訊くから
  「分からないよ〜」って言って
  みんなでもっともっと笑ったんだよ―
 
教室の前の花壇でも
八本のダフォディルが大きな口を開けて笑っている
理由なんかきっとない
ただ笑いたいから笑っているんだね

そう言えば団地の横の花壇でも
同じ笑顔が並んでいたっけ?
確かそこでは水仙と呼ばれていたね

でもね、呼び名なんて多分どうでもいい
土と水と太陽さえあれば
地球のどこであっても
それぞれの場所で
すくすく伸びていくんだよ
ある時春の息吹を感じたら
真っ直ぐ前を向いて元気よく笑うためにね 
理由なんかなくったってさ!

 ―今日は“歩こう”の歌を歌ったんだよ。
  先生が面白いから楽しいんだよ―
 
あれあれ?
なんで土曜日に学校行かないといけないの?
なんで漢字なんか勉強しなきゃいけないの?
なんて涙溜めて駄々をこねて
母さんを困らせていた子はだあれ?

混沌としたこの大国の片隅にある
小さな日本語学校の、
生徒八人と先生が入れば一杯になっちゃう
二年生の教室にも
ようやく春がやって来たんだね
優しい光を全身に浴びながら
八本のダフォディル達が 大きな口を開けて
ただ一生懸命に歌っているよ


自由詩 八本のダフォディル Copyright 夏美かをる 2014-04-30 13:44:19縦
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