めまぐるしくも
ただのみきや
昼下がり
古いテニスコートを占領して
自転車の練習をする女の子
もうずい分上達したようで
ぎこちなくだが転びもせずに
不規則軌道を描いている
ヘルメットを被った人工衛星
昔は誰も被っていなかった そういえば
瘡蓋だらけの膝小僧で走り回る
そんな子供も今ではあまり見かけない
母親が少し離れた場所から見守っている
「止まる時は足からでなく ちゃんとブレーキかけてから 」
「おかあさんみて!できた!むずかしいけどできた! 」
――この春 初めて二十℃を越えた
桜はまだ タンポポも
宣愛の練習を想い出す
わたしは何にでも厳しすぎたのだ
選利矢は練習しなかった
まだ玩具のブーブーにまたがっていた頃
倒れて 回復することもなく逝ってしまった
この先 孫でもできたなら
また練習を手伝うだろうか
たぶん そんなことはないのだろう
繰り返される春は記憶と入り交じり
喜びも悲しみも入り交じり
成す術もなく夢のように 人生は
北国の春のめまぐるしさに似ている
新一年生たちが帰って来た
色とりどりのランドセルが花びらのよう
陽射しの中を吹き抜けて往く
桜はまだ タンポポも
《めまぐるしくも:2014年4月24日》