夕暮れのひととき
イナエ
おんなが三人
テーブルを囲んで笑い声を上げていた
おとこは
二つほどテーブルの間を置いて
ゆったりとコーヒーカップを口に運んでいた
おとこはおんなをこっそり眺めていた
週刊誌を読むふりをして
ちらちら視線を女の胸に
あるいは
閉じ合わされた膝頭に
走らせた
ひとりのおんなが立ち上がり
おとこのテーブルの横で
一瞬 立ち止まり
トイレの方に去っていった
おとこは
おんなが話しかけるのを
期待しているのでもなかった
ただ 黙って眺めて
おんなが去れば
眺めていたことさえ忘れた
ひとときここにいることで
ひととき女を眺めていることで
なにかが 満たされる
ような気がしていた