夕暮れのひととき
イナエ


おんなが三人
テーブルを囲んで笑い声を上げていた
おとこは 
二つほどテーブルの間を置いて
ゆったりとコーヒーカップを口に運んでいた

おとこはおんなをこっそり眺めていた
週刊誌を読むふりをして
ちらちら視線を女の胸に
あるいは
閉じ合わされた膝頭に
走らせた

ひとりのおんなが立ち上がり
おとこのテーブルの横で
一瞬 立ち止まり
トイレの方に去っていった

おとこは
おんなが話しかけるのを
期待しているのでもなかった
ただ 黙って眺めて
おんなが去れば
眺めていたことさえ忘れた

ひとときここにいることで
ひととき女を眺めていることで
なにかが 満たされる
ような気がしていた





自由詩 夕暮れのひととき Copyright イナエ 2014-04-14 09:50:23縦
notebook Home 戻る