白い花の抜け落ちる憂鬱
橘あまね


遠くの街の錆びた街路樹に
薄紅色の吐息が咲く
秘密めいた儀式は終わりがない悪夢によく似て
通りすがりの足音を数える孤独な作業みたい


蛇口からほそく水を落とす
鉄くさい地下室からは解体される機械じかけの悲鳴が
ちいさく響き
ぼくは歯の抜ける夢をみながら
ドアを蹴破ることもしない


できないことができないのが許せなくて
枯葉色のポケットから錠剤を飲み下し
空を無くした連中を憐れみそして見下し
悪い憶測は階乗で増えていく
止めることができないから錠剤を追加する


ああ!
ぼくはちっぽけだあまりにちっぽけだ
遠い街の儚い白い花に繋がれた鎖を噛みちぎる
毛むくじゃらの生き物
噛みちぎるために生まれてきた奴等に
噛みちぎられないにはどうしたらいい?


日暮れを恐れて靴底がひどく重いから
もう歩きたくないのに
遠くの街で孵る薄紅色の吐息を
ぼくはいつまでも求めてやまない


自由詩 白い花の抜け落ちる憂鬱 Copyright 橘あまね 2014-04-11 20:40:42
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