そらの珊瑚

何事もなかったように光る海
廃線路の先には菜の花が咲く
網棚に取り残された箱を開ける勇気もなく
揺れる電車
ねむりを誘う振動
座ったままのうたたね
かしげてゆく首
透明な重力に引かれる右側
ご、ご、ご
水が出てゆく

無数のexample
くぐもった世界は
突き出された真実に
優しい紗をかけ
逃げ込むにはちょうどいい世界だった

あの夏
溺れかけたときから
鼓膜を通って
たまっていた


ああ、すっかり
なまぬるくなった


さようなら
私の水
手放してゆこう
三月に


自由詩Copyright そらの珊瑚 2014-03-15 09:08:14縦
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