ゴーストライター
itukamitaniji

ゴーストライター

長いと言えば大袈裟かな 僕はまた少しだけ旅に出たんだ
いつものように 暇潰しに適当な小説を鞄に忍ばせて
窓の外の景色が変わってく 開いたページから零れる物語と
相まって僕を 知らない世界へと運んでゆく

ふと考えてみる 僕の物語は今何ページ目くらいだろうか
序章はとっくに過ぎたかな すでに終章に差し掛かっているのかも


小説は佳境を越えて たくさんのカラクリを解いて終わった
主人公にはそれが終わりだって 知らされることもないまま

そもそも生まれたことも 自分以外の誰かと誰かの意思だった
それが少しずつ 自分の意思なんだってすり替えられていった
ようやく一人になった頃 独りじゃ生きられないと知った
僕の物語もきっと たくさんの言葉や出会いで動いているって


テレビの中で男が喋ってる
「私はゴーストライターでした」
その言葉通りの
幽霊みたいな冴えない男でした

きっと誰もが 誰かの物語のゴーストライターなんだ
名乗り出たりすることなく お互いの白紙を埋め合ってゆく
独りじゃ生きられない君を 誰も一人にはさせない
君の物語もきっと たくさんの言葉や出会いで動いているって


自由詩 ゴーストライター Copyright itukamitaniji 2014-03-05 16:58:10
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