ひな
salco

垂乳根の母がそうしてこわれたら
貌あおみどりにこわばって
幽鬼のように見えましょう
蛍光管は外しましょ

こわれた母には濃いきれでなく
産着の色を着せたげます
さきの事実は疾くに消え
七十年まえ残照のこるのです

こわれた母の手を包み
花咲くお庭へお連れして
背もたれ床几にケット敷き
あらざる今を浴します

こわれた母に赤ひも輪にし
ふたりで綾とりいたしましょ
こわれた母は童女です
こわれた母はあなたの生んだ

こわれた母が凍てた眼で
腹が空いたと言うでしょう
ひなあられ薄い冷たい掌に
夢の淡雪あげましょね

こわれて心許なく母しろく
どんどん消えて行きました
なごりの遠い日の光
小さなおほねに透かしましょ


自由詩 ひな Copyright salco 2014-03-02 22:49:48縦
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