春待ち
小原あき
ボールが転がる音がして
振り向いたら
それは冬が去っていく音なんでした
冬は寒いものを転がして
古くなったものを巻き取って
辺りをふかふかの風景にしていきます
それが春なんでした
春はお母さんの子宮みたいに
温かなんでした
お母さんって呼ぶと
赤く温かな気持ちになります
遠い遠い記憶が
春を待つわたしの中を
転がっていきます
小さな子どもが
ボールが転がっていくところを
走って追いかけていきます
自由詩
春待ち
Copyright
小原あき
2014-02-25 20:38:08