冷えた歌声

透明な
冷蔵庫の中で
君が冷やされている
寒くはないのだろうか
君は楽しそうに歌を歌っている
ひんやりとした歌声が
暖房の効いた部屋に広がる

このまま冷やされ続ければ
その歌声も失われる気がして
僕は必死で声をかけるのだけれど
君は知らぬ顔で 
我慢強く歌い続けている

やがて日は落ち
窓を静かにすりぬけて
夜の群れがやってくる
彼らが部屋を訪れたからには
僕は眠らなければならなかった

僕は再び冷蔵庫の中を覗き込む
身体を燃やして歌っているのだろう
君は肌の上に汗を輝かせている
けれど
君が冷やされていることに変わりはないのだ

僕は透明な冷蔵庫を
一番温かい毛布で包み込む
君の姿は見えなくなり
歌声だけが響き続ける
僕は眠らなければならなかった

明日の準備を整えて
暖房を消し
布団へと潜りこむ
夜の群れは静かに
僕と君のすき間に佇んでいる

ひんやりとした歌声が
柔らかく ゆっくりと
温かい布団にしみこんでくる
その冷たさを感じながら
僕は眠った 
とても深く
眠った




自由詩 冷えた歌声 Copyright  2014-02-21 21:01:33縦
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