魚上氷
nonya


魚上氷
うおこおりをいづる


冷たい水底で
来る日も来る日も
あわぶくの羅列を眺めてきた

滞りがちな
私の中の遅い水は
妄想だけを鰓の内側に沈殿させた

待つのは慣れている
待つために生まれてきたようなものだから
冷たい水底にも
やがて暖色の水流が届くことだろう

新しい季節の兆しに
尾鰭が呼応するようになったら
あらん限りの力で水底を叩いて
頭上に覆い被さる水素結合を突き破ろう

はしゃいだ光の中へ
唐突に飛び出してヘルタースケルター
鰓呼吸しかできないことも忘れて
青空の端っこに喰らいつこう

それまでは

仄暗い水底で
来る日も来る日も
つぶやきの小石を弄びながら

浮き袋の中で
発酵し続ける溜息を
タイムラインの急流に逃がしておこう




自由詩 魚上氷 Copyright nonya 2014-02-17 17:54:11
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