優しい人の手

優しい人の手を拾った
深夜だった
路上の片隅に転がるそれは
少し青白く
何だか寂しげに
落とし主が戻るのを待っていた

ひんやりと冷たく
落とせば砕けそうな手だった
それでいて重たく
確かに血の通った手だった


見渡せば
無言で話す電信柱
排水溝が飲み込む光


交番に届けるべきか
少しだけ迷った後で
元の場所に置き去って
真っ直ぐに家に帰った

暖房の無い冷たい部屋で
一人入れて 一人飲んだ
インスタントのコーヒーは
人肌のように 温かった



自由詩 優しい人の手 Copyright  2014-01-21 23:20:50
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