トマト
itukamitaniji

トマト

みんなと仲良くやりなさい 好き嫌いを作っちゃだめだよ
子供の頃の僕に 先生や親たちはそう言って聞かせていたっけ
教室の隅に追いやられ 一人で悶絶していたあの頃の自分
誰も助けてくれなくて 校庭で遊ぶ子らをうらやましく眺めていた

約束は絶対だよ 噛み砕き悶絶して飲み込んで

みんな友達だよ 仲良くみんなで遊びましょう
みんな友達だよ さぁ仲良くみんなで手を繋ごう


どうも仲良くできない あいつとはなんか合わないんだよな
そんな言葉が行き交い 通用する世界になってしまったんだ
自分で決めてよくなった もう隅にも追いやられない
抜け道に気づいてしまったんだ わざわざ構わなくていいという術に

約束は消えていった 吐き出して遠ざけて見て見ぬふり

できっこないさ 出会う人全員と仲良くだなんてさ
できっこないさ 出会う人全員と思いを一つになんてさ


久しぶりに会った友達は 僕の嫌いな食べ物を覚えていて
相変わらずかよって 笑いながら僕の前で平らげて見せる

憎たらしく真っ赤なトマトを


僕とは縁がなかったってことで 違う誰かに愛してもらって
僕とは縁がなかったってことで 何処かで幸せになれよ

僕が嫌ったものも きっと何処かの誰かの大切なもので
何処かの誰かが嫌ったものも きっと僕の大切なもの

そういうことで 恨みっこなしということで


自由詩 トマト Copyright itukamitaniji 2014-01-16 02:33:00
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