拾参憑き姥(ぼ)の暦うた
salco
苛性ソーダを鍋で煮る
知っておるやら何の日か
泡立つおはじき夢に見る
わしの願掛け三隣亡
睦月いち足すじゅうににち
黒丸しるす天赦日は
ひがみねたみが吉を引く
素通りなれば追うて剥ぐ
如月数えてじゅうといち
馬鈴薯の芽刳りみじん切り
ソラニン和えのおひたしを
羽振り見よかしの客人に
弥生とおかは寒ほどけ
まなうらに黒檀色の糸を引く
まぼろしの情夫の肌に乳も張る
しらじら喪主の白綸子
卯月ここぬか不実はあるじ
朝の鏡に削ぐ泡が
咲くよに染まる剃刀は
刃こぼれ仕込む妻のわざ
皐月やつれてはちにち目
裏庭ついばむ碁石の軍鶏が
蹴爪一閃青を裂き
繕いの手止め葉蘭の闇を聞く
水無月なぬかで拾参だ
梅雨が来ぬ間のキンポウゲ
夢枕ゲエトル解けば骨の見え
青梅のシアンの核も頼もしや
文月さかしまろくにちで
びっこの小姑ご新造いじめ
癇癪持ちの似た者よしみ
黄縞の蜂に二度刺されませ
葉月いつかのイデオログ
意固地けちんぼ中風の舅
生け恥さらしが生き腐れ
〆さば中って下しませ
長月よっかは櫛の目に
ぞろり抜け毛が秋報らす
懐くも否も継子の憎さ
ぢごくへお遣りと曼珠沙華
神無みっかの富くじは
鬼門土塀にツキヨタケ
椎茸をよそおう裏黒みそ汁に
入れて夕餉に出してやろ
霜月ならばもうふつか
夜ざむに重ねる盃に
赤肌ぴりりの風呂立てて
動悸ほろ酔い血どろどろ
師走きたればついたちに
晴れて縁切り火を放つ
黄泉びと知らずの形見分け
通帳証券たずさえて
くちべに尺骨肥後守
おんなは花売る卵売る
湯灌羽二重抱き人形
手ふだ切ふだ褪せぬ内