燃え残る声

空を目指して 山道をゆく
土を踏みしめ 前を見据えて 
太陽を背に 進みゆく

蹴り飛ばしたのは 昨日の言葉
放り投げたのは 明日の行方
崖下は遠く落ちていく中
あのいつかだけが 消えずに残る

立ち止まっては 風が吹き
歩き出しては 夕暮れて
太陽の光 消えないうちに
下りなければと 下りなければと
頂上にさえ つかずに思う

この先は あまりに遠く
この場所は あまりに脆く
落ちていく 逆さの空へ 落ちていく
そんなイメージだけが頭に
浮かんでは消え 浮かんでは消え 
そして最後に 消えずに残る


そして突然に それはそう 突然に
頂上が 降ってくる
あわてて頭を守る私へ
たくさんの頂上が降り注ぐ

手を伸ばそうか迷う間に
頂上は皆 転がり落ちて
どこまでも
私から遠ざかる
逆さに遠ざかってゆく


途方に暮れて
空を見上げて
見事なほどに
何も無い のに
そこに確かに残った距離に
何故か安堵し
じっと見つめる じっと見つめる

そしてその空が
未だ変わらず
夕暮れたまま 横たわり
息をしていることに気付いて

ありったけの声をかき集め

叫ぶ 




そうしていつかが過ぎ去って
木霊は答えることもなく
私の声は燃え残り
夕暮れの中 溶けてゆく
明日を待たずに 消えてゆく

私は空をもう一度
確かめた後息を吐き

ゆっくりとそう
足元を見る
擦れて傷んだ 爪先を見る


下りの道は 上る道より
険しいものと知っているけど

早く帰ろう
あの待つ場所へ
早く帰ろう
出発点へ

そう 未だ燃え続ける
太陽の光が 消えないうちに


自由詩 燃え残る声 Copyright  2013-12-27 17:47:28
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