さめるまで
Lucy

あともう少しと思うところで
火を止めるのよ
もう薪はくべなくていい
蓋をあけてはだめ
後は鍋ごとさめるのを
待つの
ゆっくりさめながら
ジャムはだんだんジャムになるから
リスの母さんはそう言いました

子リスは待ちきれなくて
さっきノイチゴを摘んだ森まで
駈けていきました

煮物はね
さめながら味が染みるのよ
ゆっくり時間をかけてさましてゆくの
急に冷やしたりしてはだめ
おばあさんは言いました


真冬の子リスは
ゆっくりさましたものを
味わいながら
秋に埋めてあるいた
ドングリを思い出す
ドングリも
ゆっくりさましておくと
甘くなるかしら
春まで待てば
とてもおいしくなるかしら


リスの母さんは思います
さめながら
本当になっていくものが
他にもあったかもしれない
燃え上がる一時の感情じゃなく
ゆっくり さめながら
トロリと甘く
味の染みていくものが
心の中にもあるなら
焦らず
待ってみましょうか


自由詩 さめるまで Copyright Lucy 2013-11-26 20:47:48縦
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