君のいんもう
虹村 凌

まぁそんな顔するなって
行くなら行けよ、俺はここで待ってるから
まぁあれだ土産もって
帰って来いよ、俺はここで待ってるから

目を覚ましても
夢すら見られなかった別の人生が通り過ぎて行く
君とセックスをしたり僧になったりピザ屋になったりグレッチで殴ったり
どうあがいても全部絶望でしかない

目を閉じても
顔すら思い出せないお前の人生が遠ざかって行く
俺とセックスをしなかったり絵を書いたり旅をしたりガソリンで燃えたり
どうあがいても全部夢物語ですらない

あーそっちじゃねぇ
目を開けたまま夢を見たいんじゃねぇ
寝言を聞きたいんじゃねぇ
下克上したい訳でもねぇし劣等生で十分だ

両手いっぱいに抱えたゴーグル
網膜剥離した目に映る
眼鏡
胸躍る
サングラス
目を開ける
手を伸ばす
まぶた
口唇
くちびるに歌
閉じた肩にかかる
くちびるから歌
肩にかける
目を開ける
足で引く
悲劇をひっくり返させない人生を自ら選んで行く

こんなに悲しい思いをするなら
いっそ草や花に
いや君の陰毛に
いや永久歯に産まれたかった


自由詩 君のいんもう Copyright 虹村 凌 2013-11-22 19:50:06縦
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