子供は風の子 大人は火の子
nonya
等圧線の険しい尾根道を
一気に駆け下りた寒気の精鋭に
容赦なく身体を押えつけられて
また2センチ青空が遠のいた
街路樹の痩せた指先から
次々に零れ落ちた枯葉の巡礼を
容赦なく運動靴で踏みにじったら
また2オンス今日を取り逃した
自分の真ん中で揺れ続ける火を
気にも留めずに風と戯れていたのは
いつ頃までだったのだろう
自分の外側で吹きすさぶ風に
背中を向けて火を弄ぶようになったのは
いつ頃からだったのだろう
子供は風の子 大人は火の子
風の履歴を消しながら
風の後味を薄めながら
子供は大人になっていくのだろう
火の粉を何度も被りながら
火の粉さえも拾い集めながら
大人は大人であり続けるのだろう
子供は風の子 大人は火の子
世間体と体脂肪を重ね着して
もはや風を通さなくなった魂に
たとえ薄汚いと後指を差されようと
しがらみと諦めを一緒くたに入れて
いい塩梅にとろ火で煮込んだ日々から
たとえ見苦しいと顔を背けられようと
とりあえず生きてみようと思う
自分の中の埋み火がやがて燃え尽きて
これっぽっちの灰となって
風に運ばれるその日その時まで