曲がり角のひと
たま


ひとはまっすぐ生きられない
かならず、曲がり角はやってくる
見覚えのない交差点はこわい
視界の閉ざされた曲がり角は、もっとこわい

たとえば
人生がなくても小説は書けるという
それは狂気なのだと思う
留まることなく
崩壊するための


そのひとはいつも曲がり角に立っている
ほんのすこし、俯いて

ひとつしかないおおきな瞳には
見えないはずの曲がり角の向こうが
写っているはず

この角を曲がれば、崩壊するかもしれない
ささやかな日々の暮らしも

だからといって
留まることはできないと知っているのなら
なにも期待しないで
狂気を受け入れるしかない


たしかに、人生がなくても小説は書けるだろう
でも、いつかは疲弊する
いや、それは
疲弊のなかで、もがくようなものだ

とても、崩壊とは呼べない
たとえ、創作であったとしても
ただ、単に
(現代)という仮面をつけただけだ

曲がり角のひとよ

あなたのその鏡のような瞳には
希望が宿るのでしょうか
勇気が宿るのでしょうか

このわたしの狂気を写すたびに
いつも、やさしく声をかけてくれる



行ってらっしゃい。

行ってきます。











自由詩 曲がり角のひと Copyright たま 2013-11-14 11:41:04
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