靴のはなし
梅昆布茶

最初は無骨で地味で
冴えない靴だと思った

わずかに白い糸の縫製が丁寧であること
靴紐の穴が登山靴風に六角の鋲が打ってあってしっかりした外観なのと
黒地に白いソールのアクセントのバランスがよいことが救いで
履き心地はフィット感に乏しくただ意外と軽かったのを覚えている

大手スーパーにテナントで入っていた靴専門店の閉店せールの売れ残りで
誰の目にもとまらずただ僕がメーカーと値段でたまたま手に入れたものだ

時にモノは買い手を良くも悪くも裏切るものだが
この靴の場合はさいわいにして良いほうだったらしい

ホームセンターで売っている手頃な安全靴よりもよっぽど作業には向いている
やたら丈夫で多少のダメージならかなり回避してくれたし
かなり荒い使い方でもほとんどキズもつかないし
なによりよっぽどの雨でもない限り足が濡れることはなかった

もう何年履いているのか忘れているぐらいに足になじんでいる気がする
さすがに部分的にへたってはいるのだが主人に合わせているのかもうしばらくは持ちそうだ

たまに同じメーカーの靴を見かけるし公式ホームページを覗いてもみるのだが
なかなか同等品はみつからないままでいる

まあ靴ひとつどうでもいいと言えばそのとおりなのだが
また予想を裏切る靴を履いてみたいともいまだに思っているのだ




自由詩 靴のはなし Copyright 梅昆布茶 2013-11-08 20:05:34
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