正月
メチターチェリ

三が日は毎年家族で過ごす。朝はコタツにくるまって年賀状の仕分けする。おとん おとん おかん おとん おかん じいちゃん おとん あにき おとん おもち おとん おかん おとん なんこ じいちゃん おとん? おかん あにき にこ おとん。そのうちじいちゃんが起きてきて、お国のために〜て騒ぐから、じいちゃんそりゃてっぽうじゃねえちくわだって教えてやってちくわ咥えさせてやった。元旦だってのに外は雨模様で、やぁねぇもぅとおかんが雑煮かき混ぜながらこぼす。おかあさん、せっかくなんで今日は家でのんびりしましょうって、ねえさんがこぼした雑煮を片付ける。その左手には確かにほんもののダイヤが輝いていて、細いし、白身魚みたいだ。細いし、白身魚みたいだっていってみたら、もうそれどういう意味〜っていたずらっぽく笑った。今年初めての一家そろった食卓で椅子が一脚たりねえからおれだけなんか気つかうわ。気つかって数の子食べないでいたら、それでいいみたいな雰囲気になるのを待った。テレビがどこかの商店街の様子を映す。おとん、朝刊広げて電力はあるに越したことないってぼやいた。おかんは年甲斐もなく美肌とか気にして、こちらアセロラがお買い得ですよ。テレビがいう。ねえさんがいう。横であにきが黙々とエビの殻むいて、じいちゃん金ぷんとかばかみたいに浮かんでる焼酎飲んで、おとんおかんあにきじいちゃんねえさん、おれ。チャンネル変えて漫才やってたから、それみてときどき笑った。おれがばかみたいに笑ってるのみてあにきがちょっと睨んだ。あにきが食後にコーヒーなんか飲んでてじいちゃんすっげー嘆いてる。でもじいちゃん、コーヒーはアメリカのもんじゃねえよっておとん。おかんが笑う。おとんも笑う。ねえさんがいたずらっぽく笑う。おれ食い終わってすることねえから、チラシについてた福笑い切って遊んでんだけど、なんかい並べてもなんかい並べても目と鼻と口がはみ出る。じゃあなんだったらはみ出ねえんだよって思ったけど、だいたいにおいてはみ出てる気がした。


自由詩 正月 Copyright メチターチェリ 2013-11-01 01:48:48
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