秋の待ち伏せ(ツイッター#pw秋組参加作品)Ⅱ
そらの珊瑚

【乾期】

鉢植えが日ごとうらぶれていく
朝顔はもう咲かないだろう
ふたたび未来をつなげる種だけを残して
それでいいじゃないかと
乾いていく
ほんの少し私も そこで
足踏みしている



【美しき残酷】

花占いの結果は混沌として
待ち人が来たのかどうか 知らされぬうちに
ちぎられたはなびらは墓標
うず高く積まれ
一陣の風
あっけなく崩れ
オフィーリアとともに金色の流れに消えていった



【虫】

蓑さがしています
もしくは
寝袋のような
素敵な家を
膠ならば
飴色に仕上がっています
眠るための枕や
オルゴオルだって持ってきました

薄日に照らされた
森のこずえで
カタログを眺めています


【冥王星から】

君の名前を思い出したよ。
星の名前が
何故、失われてしまったのかとか
僕をとりまく
たとえば
光と影の法則や
この切符で行こうとしている場所の
お天気や
世界の仕組みを
いまだ知らないのだけれど

カムパネラ、
君が鳴らす鐘の音だけは
まっすぐ
ここに届くんだ


 

【三つ編みの少女たち】

言葉の縄が編まれていく
しゅるるしゅるるる
夜は昨日より少し長くて
足りないところをこぶ結びでつなぎまして
刃物のような三日月に引っかけてブランコしている
こぐまのサーカス
朝は昨日より少し寒くて
風邪ひかないで



【讃美歌】

流れ星は永遠の自由を手に入れたのだね
終わったわけではなく それは
始まり
渦から卵が産まれるように
痛みから祈りが生まれるように



【切符拝見いたします】

かつて駅は入り口であって出口だった
「 いってきます」と「ただいま」でつながっていた
スキップ スキップ
青い帽子を被った駅員の
鋏が繰り出すリズムで
人々は踊っていたのに
自動改札になってからというもの
駅は無言の通過点になった






自由詩 秋の待ち伏せ(ツイッター#pw秋組参加作品)Ⅱ Copyright そらの珊瑚 2013-10-28 09:43:17
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