蛇行
梅昆布茶

後ろを振り返るとだれもいない
たぶん肩をたたいたのは夕暮れ

漆黒が塗り重ねられてよるを待つ
あさの白さに塗り変わるまで

針千本飲まされてもうゆびきりはしないと思ったころ
ぼくは立派な裏切り者だった

私がながれて溶けたよる
正面玄関にたっていたのはだれ

億劫の時をかさねて貝となる
ただひとひらの花びらと遭う

花びらを流して一つの河となし
渡し守ならばこころをつなげよ春へ

夜行列車に飛び乗って
切符もないまま改札を待つ

母を売り父を埋めて春を待つ
芽吹く春野に挽歌も埋める

蒼穹に弓を放ちて時を待つ
降りこぼれるもの地上に満つるまで

花ひとつ誰のためでもないならば
それでも愛でるそれを恋する


短歌 蛇行 Copyright 梅昆布茶 2013-10-26 19:25:00
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