ふしぎな生き物
梅昆布茶

その生き物に色とりどりのガラス玉をもらった
それはよく見ると一個ずつが脈動してそれぞれの色で輝いている
ときおり澄んだ音色で囀る心臓のようだった

ふしぎな生き物は美しかった
息が止まるぐらいに僕をどきどきさせた
誰にも説明できないかたちをしていてわずかに色を変え
しばしば静かな瞳でぼくを見つめかえしてきた

いつも仕事で通った道は近郊の小さな渓谷を横切っている
細い水流が陽光を照り返してこころの渇きに届いた
ハイカーらしい人々が散見されるぐらいでひっそりとした佇まい
通り過ぎるだけのそこが好きだった

電話で話した折衝係らしき男はやや高飛車な口調で支払いの期日を指定する
機械的に振込み口座の番号をメモし頭のなかでぼんやりと金策の算段をする

明日もあの生き物はどこかひそやかな場所で生きているのだろう
最近はめっきりとみかけなくなったがときおりその気配を感じることがある

ふしぎな生き物としばらく暮らした
ぼくがそれと会話できなくなった日に
それはふしぎなままで去って行った


自由詩 ふしぎな生き物 Copyright 梅昆布茶 2013-10-14 20:51:15
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