この街はケツの座りが悪いと言う
虹村 凌

誰も死なない
何も爆発しない
青い空と適度な仕事
学校にいた頃の延長の様な平和な日々
麻痺したまま食べられて行く
ずっと

この街はケツの座りが悪いと言う

惜しまれながら死んで行く英雄に憧れる若者は
やがて惜しまれながら死んで行く英雄に憧れる中年になる
老いぼれバンドマンのセレナーデ
弱きものを守る正義のヒーローになりたかった少年
世界を救う勇者になりたかった少年は
もう誰も救えず誰も守れず
些細な苛立ちすら隠せずに八つ当たり
街に弾かれて憤りの安酒を垂らす

この街はケツの座りが悪いと言う

田舎者たちが夢を具現化した街は
打率四割のバッターみたいに
他の田舎モンを返り討ちにする
返り討ちにされた奴らが悪態をついて離れて行く

田舎モンが作ったでかい田舎で育ち
故郷を持たぬままに生きると言う事は
それだけで薄ら寒い孤独に苛む事では無いのだと
薄い乳房の中で泣きたい日もあるのだけど
もう顔も思い出せないから

この街はケツの座りが悪いと言う

SNSは魂の安売りだと言う
今はその気持ちが理解出来るよ
全てを切り売りして安売りして磨り減らして
産まれたこの街をケツの座りが悪いと言いながら

中途半端な高さのテトラポットの上で気取る高みの見物は
まさしく他人の同窓会とか
人より一回多い学園祭気分で
腰掛けたガードレールが冷たいままコカコーラを飲み干して眠り
見る夢はテトラポットの上に立っていた気紛れな恋人で


もうあの頃の薬は効かなくなってる
速度や重さがどんどん不足していく


自由詩 この街はケツの座りが悪いと言う Copyright 虹村 凌 2013-10-13 01:09:01縦
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