波打際の人魚のために
あおば

            131012


メタボ検査をします
看護師が
恭しい手つきで巻き尺を取りだし
臍の周囲を丁寧に計測した
見るからにやせっぽちなのに
なぜ計るのだの野暮なセリフは吐かない
計るのが義務で規則になっている
簡単に云えば行政からの要請なので
喩え、波打ち際の人魚だって計測から逃れるわけにはいかないのです
先導のパトカーに乗せられた鹿の角きりが丁寧に施行され
明後日まで暑さが続く模様との報道を聞きながら
夏を惜しむ人魚の心がすべての人に伝わり
午後5時には薄暗くなるのにと
狷介な輩のセリフを蹴散らしスポーツの秋も出走を開始する






初出 「あなたにパイを投げる人たち」の即興ゴルコンダ(仮)
  http://anapai.com/tanpatsu/goru/
  タイトルは、みずけーさん。




自由詩 波打際の人魚のために Copyright あおば 2013-10-12 19:42:07
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