余白
Lucy

古いノートに書かれた文字を
辿って行くと
余白にぶつかって
そこから先へ進めなかった私がいる

もう書けない
諦めてしまおうと
何度も思った

余白の裏に
余白の隅に
挫折の名残を埋めてしまおう
私の歩みを無かった事にしてしまおう

細々とたどる履歴の小道に
余白がしらじら
真昼の光に晒されて

ひとつひとつの曲がり角には
目立たぬように
余白が咲いて揺れている

立ち止まっても戻れない
振り返っても
既に野草に覆われて
見えなくなった幾つもの
中断し置き去りにした夢の行き先

抱え持ってきた余白が
折りたたまれて
しまいこまれて私の胸に眠っている
引っ張り出して
皺をのばして拡げてみたら
空一面のキャンバスだった

私の余白に
最後のうたを書かせてください
もう誰からも見えるように
もう誰にでも届くように







  《 「蒼原」93号 2013・秋)掲載作品 》


自由詩 余白 Copyright Lucy 2013-10-10 22:58:33縦
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